希釈法の原理

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通常採血とデメカル血液検査セットの違い

デメカル
血液検査セット
通常採血
採血 いつでも・どこでも
利用者自身
指先採血
0.065ml を吸引器で吸い取る
医療機関
医師や臨床検査技師、看護師
静脈採血(腕など)
5~10ml を採血管に採取
希釈 ボトル内の緩衝液で混和・希釈 -
血漿分離 特殊膜による即時血漿分離 遠心分離
輸送 検査センターへ郵送 -
検査 検査センターで検査 院内検査室又は検査センターで検査
検査結果 Web, Mail, 報告書 報告書
診断 出来ません
(検査結果は健康管理の一助として利用)
医師による診断

 

“微量血液希釈法”とは

通常の血液検査を行う場合には、医療機関で看護師や検査技師などの有資格者が腕(静脈)から数mLの血液を採取し、遠心分離装置など特殊な機械を用いて血液を血球と血漿又は血清に分けます。多くの検査はこの血清を用いて行われます。

即時血漿分離デバイス「デメカル血液検査セット」は、いつでも・どこでも・簡単に・微量の血液を採取することが出来るキットです。利用者は指先に僅かな傷をつけ0.065mLの血液を採取します。血液量が少ないため、採取した血液を専用の緩衝液で希釈します。よく混和し希釈した後、特殊膜を用いて血球と希釈された血漿を分離します。この希釈された血漿を用いて検査を行います。

薄まった血漿の検査項目を測定し、薄まった割合(8倍や10倍など)を掛け合わせることで元の希釈する前の値が計算できます。
例えば、薄まった血漿の総コレステロールを測定すると18.5mg/dLであり、10倍に薄まっていた場合には、18.5×10=185mg/dLとなり、元の血漿の総コレステロールは185mg/dLと計算できます。

この方法が必要とする血液量は0.065mLと極めて微量なので、在宅などで一般利用の方々にとっても特別な負担をかけることなく指先から採取できる血液量です。

つまり、微量血液希釈法は、微量血液にて多項目検査の測定値を提供できる方法といえます。(生体試料分離器具及びその分離方法:特許番号:特許第3597827号,生体試料調製方法、生体試料定量方法及び生体試料保存容器:特許番号:特許第3698696号)

微量血液希釈法では、通常検査と異なるいくつかの工夫が必要です。

 

希釈試料を測定できる高感度な測定系

検査に用いる分析機器、測定試薬は通常の病院や検査センターで用いられている高精度なものを使用しています。しかし、病院や検査センターで測定される通常の検体は希釈されていません。微量血液希釈法では、検体が10~15倍に希釈されているため、通常の検査より高感度に測定する必要があります。そういった観点から分析装置や測定試薬の選定、さらに分析条件の見直しを行い、10~15倍に希釈された検体を測定するのに最適化された条件を構築しました。

血清を直接測定する方法に比べると、その精密さと正確さは完全に同等ではありませんが、健常者と疾患を持った方を分別するには十分な性能を持っています。

検体毎に異なる希釈倍数の算出

利用者自身が採血を行うために、採血量は一定になりません。0.065mL採取される方や0.060mL採取される方もいます。よって、血液が薄まった割合が検体毎に異なります。
もし採血量を一定に出来たとしても、血液のヘマトクリット値(血球容積)が個人によって違います。血液は液体の血漿と赤血球や白血球といった血球から成り、ヘマトクリット値は血液中に占める血球の体積の割合を示したもので、一般に33.4~51.8%程度です。一定量の血液を採取しても個人のヘマトクリット値の違いによって含まれる血漿の量が異なり、やはり血漿が薄まった割合が検体毎に異なります。

そこで、内部標準物質を用いた検体毎の希釈倍数算出法を用いています。

血液を希釈する緩衝液中には一定濃度の内部標準物質が溶けています。緩衝液に血液が添加されると、血液中の液体成分である血漿によって内部標準物質が薄まります。内部標準物質の薄まる割合は添加された血漿の量に応じて変化します。このことを利用し、血液添加前の緩衝液中の内部標準物質濃度「初期の内部標準濃度」と血液添加後の内部標準物質濃度「血漿で希釈された内部標準物質濃度」を用いて以下の式によって検体毎の血漿の希釈倍数を算出します。

血漿の希釈倍数

内部標準物質は、血液中に含まれない、緩衝液中で安定、血液成分との相互作用がない、高感度で簡単迅速に測定できることなどが求められます。

希釈試料の安定性

特殊膜で血漿分離された希釈試料は、検査センターまで郵送されます。
その間、測定項目成分が安定である必要があります。
通常、血清や血漿を冷蔵せずに放置すると値が変化する項目があります。
8月中旬に沖縄県浦添市から野外のポストに希釈試料を投函しての実証テストで国内の検査センターまでの輸送期間中の温度は32度まで上昇した合計時間は10時間でした。
37度での安定性試験では1週間安定であることから,希釈試料の郵送に支障はありません。

室温の場合

室温の場合
室温の場合_2

37℃の場合

37度の場合
37度の場合_2